古墳時代の4世紀後半に造られたとされる奈良市の富雄丸山古墳では、令和4年度の調査で、古代の東アジアで最も長いとされる、長さ2メートル30センチ余りの、「蛇行剣」と呼ばれる波打つような形の鉄剣が見つかり、奈良県立橿原考古学研究所で表面のさびや泥を取り除く作業が行われてきました。
その結果、持ち手部分の木製の「つか」は、▼「把頭(つかがしら)」と呼ばれる先端の部分がアルファベットの「L」のように曲がっているほか、▼「把縁(つかぶち)」と呼ばれる刃に近い部分の片側には突起がついていることが、新たにわかりました。
L字形の「把頭」はのちの時期の刀に、「把縁」の突起はのちの時期の剣にみられる特徴で、双方をあわせ持つ「つか」が見つかったのは初めてだということです。
また、剣をおさめていた木製の「さや」の先端には、長さ18センチほど、直径2センチほどの細長い棒のようなものがついていました。
刀剣を立てて置く際にさやの先が直接地面に触れないようにする「石突(いしづき)」ではないかと考えられていて、古墳時代の刀剣で確認されたのは初めてだということです。
古墳時代に詳しい奈良県立橿原考古学研究所の岡林孝作 学芸アドバイザーは、「古墳時代の刀剣類の変遷を知る上で極めて重要な資料になる」と話しています。
この蛇行剣は、3月30日から4月7日まで、橿原市にある奈良県立橿原考古学研究所付属博物館で、一般に公開されます。
専門家「この剣の特殊性がさらに強調されることに」
古代の刀剣に詳しい奈良大学の豊島直博教授によりますと、今回明らかになった、「蛇行剣」の「つか」のように先端部分がアルファベットの「L」の字のように曲がった形になるのは、4世紀後半に造られたとされる富雄丸山古墳よりのちの時期の、5世紀の刀の特徴だということです。
また、「把縁」と呼ばれる刃に近い部分の片側に突起がつくのも、同じ5世紀の剣の特徴だということです。
豊島教授は「刀と剣、それぞれの形が定型化する前の試行錯誤の段階でつくられたのではないか」としたうえで、「ものすごく大きな蛇行剣は儀式や儀礼で使う特別な剣だと思われるが、そこに取り付けられていた『つか』や『さや』も特別な形のものだったことで、この剣の特殊性がさらに強調されることになった」と話しています。